肩書きに悩んでいた頃の話・4

名刺から肩書きを消したことがある。
クリエイターでもライターでもなんでもなく
ただ「個人」として名刺を作った。

屋号と名前と電話番号とメールアドレス、サイトアドレス。

何かに対しての反抗だったかもしれない。
肩書きをつけるというしきたりに対してか、
肩書きを持つ全ての人に対してか。

いや、こんなことに捉まえられている自分にだろう。

その頃からメビック扇町でコーディネーターの仕事を
請け負わせていただくことになった。

25人程の同じコーディネーターさんと知り合った。
プロダクトデザイナー、グラフィックデザイナー、フォトグラファー、
空間デザイナー、Webデザイナー、イラストレーター、エディターなどなど。

みんなプロだった。

みんなスペシャリストだった。

複数の技術を持って横断的に活動する人たちもいた。
でも専門分野を持っていた。

僕はコピーライターと名乗った。
文章家でもあると伝えた。

僕の持つ文章以外のスキルは彼らの足下にも及ばない。
掛けてきた時間と熱量が断然違う。
「出来る」と「専門」はまるで違うのだ。

でも、その時の名刺に肩書きは書いていなかった。

《つづく》

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